2012.12.02 Vadinar in India

バディナール・インド



2012年11月10日船は、モザンビークのマプト港を東に向け航海する。夏のインド洋はインド亜大陸に大きな高気圧ができるため、ヒマラヤ方面からインド洋に向け北〜北東の強い季節風が吹く。船は真横に風浪を受け続け走るため、大きく横揺れを続けながら走らなければならないが、冬が近づく、この季節はほとんど毎日凪で快適な航海ができる。毎日、青い海とくっきりした水平線ばかり眺め、船は東方向へ進んでいく。運航者から連絡によりインドの北東岸のカッチ湾南岸にあるバディナールという港にいくことになった。若いころビシャカトナムというインド東岸の港に行ったことがあるが、それ以来だ。

ここ何年かアフリカ東岸のソマリアの海賊が猛威をふるい深刻な問題になっている。以前は大型漁船だった船を母船として使い、数隻の小型モーターボート(Skiff)が商船の後を追跡し追いついて、船尾に梯子をかけて乗り込んでくる。彼らは、ソ連製の自動小銃・カラシニコフAK-47や携帯式の対戦車ロケットRPG-7等で武装している。海賊に乗り込まれ無防備である船は抵抗のしようがなく、ソマリアの港に連れていかれ身代金のための人質にならなければならなくなる。その被害区域は、当初ソマリア沿岸、アデン湾付近のみであったが徐々に拡大し遠くインド西岸やセイセル諸島まで及ぶ広大な範囲に拡大していった。その危険区域に入らないよう船はインド洋大回りしてスリランカ沖を経由してインド西岸のバディナールに向かう。防御策としては、船の外舷にレーザーワイヤー(ブリキ製の刃が付けられたワーヤー)を巻き、乗り込めないようにしたり、船尾に案山子を置いたり消火ホースを取り付け常時放水している。更に、危険区域に入る前に、万が一海賊に乗り込まれた場合の対抗策としてCitadel Retreat (全員、機関室に逃げ込み全てのドアを内側から閉鎖し、機関室内に立て籠もり海賊が退散するのを待つという対策)の訓練を行う。

緊張の中、スリランカ沖を通り過ぎ危険区域に入りインドの西側沿岸を全速力で走る。漁船の船影を見るたびに、追いかけてこないか注意して見張りをする。夜間、沢山の漁船を避けながらVLCCが通る水深の深いDEEP WATER ROUEに沿ってカッチ湾内に入って行く。2012年11月30日の深夜、船はバディナール沖の指定錨地に投錨し入港する。何か悪い予感がする・・・。この後、久しぶりにインドで手荒い洗礼を受ける。早朝、入港管理官兼税関が1名乗船してくる。乗船するなりインドの国旗が掲揚されていない、インドを侮辱するのかとクレームをつけられる(通常入港前にその国の国旗を掲揚していなければならない。)。更に黄熱病の予防接種を受けていないことも指摘され、このままではPort Clearance(入港許可証)は発給されないと脅かされる。どうすればいいのかとその入港管理官兼税関に聞くが、このまま帰るといいはるのみで困り果てる。代理店に聞くとお金(賄賂)を払えば許してくれるという。結局は、そういうことか。船を止めるわけにはいかないので、言われるがままなけなしのポケットマネーから2千ドルも渡す。こんな事が許されるのか?まるで恐喝行為である・・・。入港管理官兼税関は、しめしめと思ったことだろう。口止めとして指摘されたことが事実であるという書類まで作らされる。悔しい!!いつかチクッてやる・・・。彼らの常套手段にはまってしまった。久しぶりのインド、これが現実か・・・!嫌というほど思い知らされる。

バディナールには巨大な2つの製油所がある。入港手続き終え、船は、その一つである海に長く突き出した海中道路の先にあるEssar Terminalの桟橋に着桟橋する。陸上タンクは、はるか遠くの陸岸に見える。着桟橋後、また他の税関が乗船してきた。今度は、船が持っている免税のタバコとウイスキーをごっそりと持っていかれてしまう。この国は一体どうなっているのか?・・・。

港は干満の差が激しく、干潮時には桟橋の周囲の広大な干潟が現れる。沈んでいく夕陽は赤く焼け、日本で見るそれよりずっと大きく見えるような気がする。官憲は、権力の振りかざし盗賊のように醜いが、沈む夕日は、とても美しい。12月3日船はナフサを満載し、揚地のシンガポールに向け出港する。カッチ湾を出るまで沢山の漁船群に遭い、走れる隙間を見つけて湾外に出る。船は危険区域を抜けるまでまた全速力で走る。




丹沢山

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